「永続地帯(sustainable zone)」とは、「その区域で得られる再生可能エネルギーと食料によって、その区域におけるエネルギー需要と食料需要のすべてを賄うことができる区域」です。このとき、その区域が他の区域から切り離されて実際に自給自足していなくてもかまいません。その区域で得られる再生可能エネルギーと食料の総量がその区域におけるエネルギーと食料の需要量を超えていれば、永続地帯となります。
「永続地帯」のサブ概念が「エネルギー永続地帯」と「食料自給地帯」です。「エネルギー永続地帯」は、その区域における再生可能エネルギーのみによって、その区域におけるエネルギー需要のすべてを賄うことができる区域です。この区域におけるエネルギー需要としては、民生用需要と農林水産業用需要を足し合わせたものを採用しています。これは、これらのエネルギー需要は、高温高圧のプロセスを要せず再生可能エネルギーで供給可能であると考えられることと、地方自治体によってコントロール可能であると考えられることによります。なお、輸送用エネルギー需要はどの自治体に帰属させるかを判定することが難しいため除外しています。「食料自給地帯」は、その区域における食料生産のみによって、その区域における食料需要のすべてを賄うことができる区域です。
このように定義すると、「永続地帯」とは、「エネルギー永続地帯」であって「食料自給地帯」でもある区域といえます。今後、「食料自給地帯」とのマッチングを行い、「永続地帯」の「見える化」に努めていきます。
永続地帯指標は、次のような役割を担うと考えられます。
[1] 長期的な持続可能性が確保された区域を見えるようにする
将来にわたって生活の基盤となるエネルギーと食料をその区域で得ることができる区域を示す「永続地帯」指標は、長期的な持続可能性が確保された区域が見えるようにする役割を担います。
[2] 「先進性」に関する認識を変える可能性を持つ
人口が密集する都会よりも、自然が豊かで人口の少ない区域の方が、「永続地帯」に近い存在となります。持続可能性という観点では、都会よりも田舎の方が「先進的」になります。同様に、この指標を国際的に展開していけば、従来は「途上国」とみなされていた地域の方が、持続可能性という観点からは「先進的」であることが明白になることでしょう。
[3] 脱・化石燃料時代への道筋を明らかにする
今の世界は、一次エネルギー投入の 9 割を化石燃料に依存しています。しかし、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料は、数百年という単位で考えるとやがて枯渇に向かいます。とくに、地球温暖化の進行を考えると、枯渇する前に使用を制限して行かざるを得ません。「エネルギー永続地帯」指標は、現段階でも、再生可能エネルギー供給の可能性の大きな地域が存在することを明らかにして、このような地域を徐々に拡大していくという政策の方向性を明らかにする役割を果たします。