「永続地帯2019年度版報告書」

レポート

域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村が、全市町村数の1割を超える-「永続地帯2019年度版報告書」

2020年4月7日

千葉大学倉阪研究室 + 認定NPO法人環境エネルギー政策研究所

 千葉大学倉阪研究室と認定NPO法人環境エネルギー政策研究所は、日本国内の市町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究を進めています。「永続地帯」研究の最新結果では、2019年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を推計しました(一部は実績値を採用)。
 今回の試算の結果、以下の事実が明らかになりました。
① 前年度と比べて2018年度の太陽光発電の発電量は16%、風力発電は9%、バイオマス発電は5%増加。一方、小水力発電は横ばい。地熱発電は減少。再生可能エネルギー熱の供給は、ほぼ横ばい。(表1)
② 2011年度から2018年度にかけて、国内の再生可能エネルギー供給量は約3.3倍に増加。
③ 域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る再生可能エネルギーを生み出している市町村(エネルギー永続地帯)の数が、2018年度に119になった。域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村(電力永続地帯)は、186に。全市町村数の1割を超えた。
④ 日本全体での地域的な再生可能エネルギー供給が2018年度に民生+農水用エネルギー需要の13.6%に。
⑤ エネルギー永続地帯119市町村のうち、食料自給率も100%を超えた市町村(永続地帯市町村)は70市町村に到達。今回、はじめて、石川県と愛知県でも永続地帯の市町村が確認された。(表2)

表1 再生可能エネルギー供給の推移(全国)

注)2016年度から2018年度の数値は今回集計した数値。2018/2011を算出するために用いた2011年度の値は、「永続地帯2014年度版報告書」(2015年3月公表)の数値。2016年度の伸び率を算出するために用いた2015年度の値は、「永続地帯2018年度版報告書」(2019年3月公表)の数値。

表2 永続地帯市町村一覧(住み続けるために必要なエネルギーと食糧を地域で生み出すことができる市町村)

【北海道:13】稚内市、紋別市、森町、上ノ国町、蘭越町、ニセコ町、苫前町、幌延町、壮瞥町、安平町、様似町、豊頃町、白糠町、【青森県:4】深浦町、横浜町、六ケ所村、東通村、【岩手県:4】八幡平市、雫石町、葛巻町、一戸町、 【宮城県:2】蔵王町、七ケ宿町、【秋田県:3】鹿角市、にかほ市、八峰町、【山形県:3】朝日町、大蔵村、遊佐町、 【福島県:2】下郷町、柳津町、【栃木県:3】那須烏山市、塩谷町、那珂川町、【群馬県:3】長野原町、嬬恋村、昭和村、【富山県:1】朝日町、【石川県:2】珠洲市、宝達志水町、【山梨県:1】北杜市、【長野県:6】小海町、長和町、飯島町、大鹿村、信濃町、栄村、【愛知県:1】田原市、【三重県:2】木曽岬町、多気町、【鳥取県:1】伯耆町、【岡山県:2】鏡野町、久米南町、【愛媛県:1】久万高原町、【高知県:1】大月町、【熊本県:6】小国町、西原村、山都町、錦町、水上村、相良村、【大分県:2】豊後大野市、九重町、【宮崎県:3】川南町、都農町、五ケ瀬町、【鹿児島県:4】長島町、湧水町、南大隅町、肝付町

「永続地帯市町村」:域内の民生・農水用エネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市町村であって、カロリーベースの食料自給率が100%を超えている市町村

※ なお、本報告書には、再生可能エネルギー普及に関する政策提言のほか、以下の個別調査結果を含んでいます。
7.1. 国内外の再生可能エネルギーの動向 松原弘直(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)
7.2. 電力会社エリア毎の電力需給にみる再生可能エネルギーの割合 松原弘直(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)
7.3. 福島第一原発事故による避難指示区域の状況 永続地帯研究会
7.4. 3万kW未満の水力発電まで試算対象とした場合のランキング 永続地帯研究会
7.5. 食料自給率計算の検証、経年変化、今後の課題 泉浩二(環境カウンセラー)
7.6. 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の最新動向 馬上丈司(千葉エコ・エネルギー株式会社)
7.7. 地方自治体再生可能エネルギー政策調査にみる課題 倉阪秀史(千葉大学大学院社会科学研究院)

本件連絡先はこちらのフォームから(千葉大学 倉阪秀史、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所 松原弘直)

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