再生可能エネルギーで住み続けるためのエネルギーを自給できる市町村が100 に到達
千葉大学倉阪研究室と認定NPO 法人環境エネルギー政策研究所は、日本国内の市町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究を進めています。「永続地帯」研究の最新結果では、2018 年3 月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を試算しました。今回の試算の結果、以下の事実が明らかになりました。
① 2017 年度に太陽光発電の発電量は2 割増加。太陽光発電の伸び率は鈍化(表1)
② 太陽光以外の再エネ発電では、バイオマス発電が7%、風力発電が5%増加。小水力発電は横ばい。地熱発電は減少。再生可能エネルギー熱の供給は、ほぼ横ばい。
④ 2012 年3 月から2018 年3 月にかけて、国内の再生可能エネルギー供給は約3 倍に。
⑤ 域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る再生可能エネルギーを生み出している市町村(エネルギー永続地帯)の数が、100 に到達。
⑥ 域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村(電力永続地帯)は、157 に。
⑦ 日本全体での再生可能エネルギー供給が民生+農水用エネルギー需要の12.00%に。
⑧ 食料自給率が100%を超えた市町村は566 市町村。100%エネルギー永続地帯である100 市町村のうち、58 市町村が食料自給率でも100%を超えている(表2)。
※都道府県分析のデータ(特に供給密度)を修正しました。2019年度版の推計方法に基づいています。2020年4月7日
表1 再生可能エネルギー供給の推移(全国)
表2 永続地帯市町村一覧(住み続けるために必要なエネルギーと食糧を地域で生み出すことができる市町村)
【北海道:9】茅部郡森町、檜山郡上ノ国町、磯谷郡蘭越町、虻田郡ニセコ町、苫前郡苫前町、天塩郡幌延町、有珠郡壮瞥町、勇払郡安平町、中川郡豊頃町、【青森県:4】西津軽郡深浦町、上北郡横浜町、上北郡六ケ所村、下北郡東通村、【岩手県:3】岩手郡雫石町、岩手郡葛巻町、二戸郡一戸町、【宮城県:2】刈田郡蔵王町、刈田郡七ケ宿町、【秋田県:2】鹿角市、にかほ市、【山形県:3】西村山郡朝日町、最上郡大蔵村、飽海郡遊佐町、【福島県:2】南会津郡下郷町、河沼郡柳津町、【栃木県:2】那須烏山市、那須郡那珂川町、【群馬県:3】吾妻郡長野原町、吾妻郡嬬恋村、利根郡昭和村、【富山県:1】下新川郡朝日町、【山梨県:1】北杜市、【長野県:6】南佐久郡小海町、小県郡長和町、上伊那郡飯島町、下伊那郡大鹿村、上水内郡信濃町、下水内郡栄村、【三重県:2】桑名郡木曽岬町、多気郡多気町、【鳥取県:1】西伯郡伯耆町、【岡山県:2】苫田郡鏡野町、久米郡久米南町、【愛媛県:1】上浮穴郡久万高原町、【高知県:1】幡多郡大月町、【熊本県:5】阿蘇郡小国町、上益城郡山都町、球磨郡錦町、球磨郡水上村、球磨郡相良村、【大分県:2】豊後大野市、玖珠郡九重町、【宮崎県:3】児湯郡川南町、児湯郡都農町、西臼杵郡五ケ瀬町、【鹿児島県:3】出水郡長島町、姶良郡湧水町、肝属郡南大隅町
「永続地帯市町村」:域内の民生・農水用エネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市町村であって、カロリーベースの食料自給率が100%を
超えている市町村
※ なお、本報告書には、再生可能エネルギー普及に関する政策提言のほか、以下の個別調査結果を含んでいます。
7.1. 国内外の再生可能エネルギーの動向 松原弘直(認定NPO 法人環境エネルギー政策研究所)
7.2. 電力会社エリア毎の電力需給にみる再生可能エネルギーの割合 松原弘直(認定NPO 法人環境エネルギー政策研究所)
7.3. 福島第一原発事故による避難指示区域の状況 永続地帯研究会
7.4. 3 万kW 未満の水力発電まで試算対象とした場合のランキング 永続地帯研究会
7.5. 食料自給率計算の検証、経年変化、今後の課題 泉浩二(環境カウンセラー)
7.6 「再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度」(FIT)の制度改正の最新事情 馬上丈司(千葉エ
コ・エネルギー株式会社)
7.7 ソーラーシェアリング全国調査にみる課題 倉阪秀史(千葉大学大学院社会科学研究院教授)