「永続地帯2021年度版報告書」

レポート

エネルギー自給率100%を越える自治体が全市町村の1割に到達
-「永続地帯2021年度版報告書」の公表

2022年6月7日
千葉大学倉阪研究室 + NPO法人環境エネルギー政策研究所

千葉大学倉阪研究室とNPO法人環境エネルギー政策研究所は、日本国内の市町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究を進めています。「永続地帯」研究の最新結果では、2021年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を推計しました(一部は実績値を採用)。

永続地帯2021年度版報告書:

今回の試算の結果、以下の事実が明らかになりました。

(1) 2020年度は再生可能エネルギー電力は7.6%増加

2020年度は太陽光発電・風力発電の伸びに支えられ、再生可能エネルギー電力は前年度から7.6%増加しました。一方、固定価格買取制度の対象外である、再生可能エネルギー熱供給は、3.4%減少し、3年連続の減少となりました。(表1)

注)2018年度から2020年度の数値は今回集計した数値。2020年度/2011年度を算出するために用いた2011年度の値は、「永続地帯2014年度版報告書」(2015年3月公表)の数値。TJ(テラジュール)=1012J

(2) 地域的エネルギー自給率は秋田県が2年連続1位

地域的エネルギー自給率の都道府県別ランクで秋田県が前年度に続いて1位となりました。秋田県と大分県が自給率50%を超え、17県が30%を超えました。

地域的エネルギー自給率ランク:
第1位 秋田県 51.3%
第2位 大分県 50.0%
第3位 鹿児島県 48.3%
第4位 宮崎県 46.1%
第5位 群馬県 39.5%
第6位 三重県 38.1%
第7位 高知県 36.0%
第8位 福島県 35.9%
第9位 岡山県 35.8%
第10位 栃木県 34.1%

(3) エネルギー永続地帯の市町村数は174となり、全体の1割に到達

域内の民生・農林水産用エネルギー需要を上回る地域的な再生可能エネルギーを生み出している市町村(エネルギー永続地帯、地域的エネルギー自給率が100%を越える自治体)の数が、2020年度に174になりました。東京23区を含む市町村数1741のほぼ1割になったことになります。また、域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村(電力永続地帯)は、272に増えました。

(4) 2020年度の地域的な再生可能エネルギー供給は需要の17.3%にまで増加

日本全体での地域的な再生可能エネルギー供給は、2011年度に民生・農林水産用エネルギー需要の3.8%でしたが、2020年度には17.3%まで増加しました。

(5) 永続地帯の市町村数は、前年度から10増加して90に

エネルギー永続地帯174市町村のうち、食料自給率も100%を超えた市町村(永続地帯)は10市町村増加し、2020年度に90市町村になりました。(表2)。

表2 永続地帯市町村一覧(住み続けるために必要なエネルギーと食糧を地域で生み出すことができる市町村)

【北海道:15】稚内市、紋別市、茅部郡森町、檜山郡上ノ国町、久遠郡せたな町、島牧郡島牧村、磯谷郡蘭越町、虻田郡ニセコ町、苫前郡苫前町、天塩郡幌延町、有珠郡壮瞥町、勇払郡安平町、様似郡様似町、河西郡更別村、白糠郡白糠町
【青森県:7】つがる市、西津軽郡深浦町、上北郡七戸町、上北郡横浜町、上北郡六ケ所村、下北郡東通村、三戸郡新郷村
【岩手県:5】八幡平市、岩手郡雫石町、岩手郡葛巻町、九戸郡軽米町、二戸郡一戸町
【宮城県:5】刈田郡蔵王町、刈田郡七ケ宿町、柴田郡川崎町、伊具郡丸森町、黒川郡大郷町
【秋田県:7】湯沢市、鹿角市、潟上市、にかほ市、山本郡三種町、山本郡八峰町、雄勝郡東成瀬村
【山形県:3】西村山郡朝日町、最上郡大蔵村、飽海郡遊佐町
【福島県:4】南会津郡下郷町、河沼郡柳津町、石川郡石川町、双葉郡川内村
【茨城県:2】北茨城市、行方市
【栃木県:3】那須烏山市、塩谷郡塩谷町、那須郡那珂川町
【群馬県:3】吾妻郡長野原町、吾妻郡嬬恋村、利根郡昭和村
【千葉県:1】長生郡長南町
【新潟県:1】中魚沼郡津南町
【富山県:1】下新川郡朝日町
【石川県:3】珠洲市、羽咋郡志賀町、羽咋郡宝達志水町
【長野県:4】南佐久郡小海町、上伊那郡飯島町、上水内郡信濃町、下水内郡栄村
【愛知県:1】田原市、【鳥取県:2】西伯郡大山町、西伯郡伯耆町
【岡山県:4】苫田郡鏡野町、勝田郡奈義町、久米郡久米南町、久米郡美咲町
【広島県:1】山県郡北広島町
【徳島県:1】阿波市
【高知県:1】幡多郡大月町
【福岡県:2】田川郡赤村、築上郡上毛町
【熊本県:6】玉名郡和水町、阿蘇郡産山村、阿蘇郡西原村、上益城郡山都町、球磨郡錦町、球磨郡水上村
【大分県:2】豊後大野市、玖珠郡九重町
【宮崎県:2】串間市、児湯郡川南町
【鹿児島県:4】出水郡長島町、姶良郡湧水町、曽於郡大崎町、肝属郡南大隅

「永続地帯市町村」:域内の民生・農水用エネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市町村であって、カロリーベースの食料自給率が100%を超えている市町村

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